個人再生手続きの流れと再生後の注意点について
個人再生手続きとは、民事再生法に基づき裁判所に申し立てを行い、提出した再生計画を認めてもらうことで、債務総額を大きく減額してもらったうえで原則3年間での分割払いが可能になるという債務整理の制度です。
この記事では、実際に個人再生手続きを申し立てた場合どのように手続きが進むのかという手続きの流れと、無事に個人再生が認められた後に債務者の方が注意しておくべきことについてご説明します。
個人再生の手続きの流れとは
個人再生手続きは、裁判所での手続きとなりますが、管轄の裁判所によって多少手続きの進め方やスケジュールに差があります。
主に、個人再生委員の選任の有無や、履行テストの有無などに差があらわれます。
そういった差を除くと手続きの流れは共通ですので、以下東京地裁の例をとって、個人再生の手続きの流れをご説明します。
弁護士への委託
個人再生手続きは裁判所が介入する手続きですので、法律の専門家である弁護士に依頼をすることがおすすめです。
弁護士に依頼をして委任契約を締結しますと、弁護士は各債権者に受任通知を送付します。
受任通知受領後は、貸金業法上の定めにより、債権者は債務者に直接取り立てができなくなりますので、平穏な生活を取り戻すことができます。
その後、弁護士は裁判所に提出するための個人再生申立書を作成します。
申立書作成にあたっては、添付資料として様々な資料の提出を弁護士から求められますので、債務者の方はこれに協力をして迅速に手続きを進められるようにしましょう。
例えば、個人再生手続きを利用できる条件である、将来にわたっての反復継続した収入があることの証明として、給与明細、源泉徴収票、確定申告書等の提出が必要です。
裁判所への個人再生申立て
申立書が完成したら、裁判所に対して申立書を提出します。東京裁判所の運用では、申立てと同時に、個人再生委員が選任されます。
個人再生委員は、多くの場合債務整理案件に詳しい弁護士が選任され、個人再生手続きがスムーズに進むように補助を行います。
債務者の方は、まずは個人再生委員と面接をし、申立書の記載内容の詳細確認を行います。
個人再生手続きの開始
裁判所が、個人再生委員の面談結果等を踏まえて、手続きを開始するという判断をすると、正式に個人再生手続きが開始します。
東京地方裁判所では、この際に履行テストといって、再生後に分割払いで返済していく予定の金額を、テストとして個人再生委員が開設した銀行口座に毎月振込み、再生後の返済が本当に実施可能なのかということも検証されます。
再生計画案の策定、提出、債権者の承諾
債権の総額の確認作業を行い、個人再生後の具体的な返済計画である再生計画案を作成して、これを裁判所に提出します。
この際、これまで実施してきた履行テストの状況や、債務者の方の現在の財産状況等も報告します。
提出された再生計画案について、給与所得者等再生手続きの場合は意見聴取、小規模個人再生手続きの場合は書面決議を行い、再生計画を認めるかどうかについての債権者の意思確認を行います。
小規模個人再生手続きの場合は、債権者の総数または債権額ベースで1/2超の反対があった場合は、手続きを進めることができず、個人再生手続きは廃止となってしまいます。
裁判所による再生計画案の認可等
再生計画についての債権者からの意見や、履行テスト等再生計画案が着実に履行される可能性などを検討した上で、裁判所は再生計画の認可ないし不許可を決定します。
決定から1か月後には法的効果が確定します。
個人再生手続きに要する期間は平均的には半年程度です。
なお、再生計画認可決定が確定した月の翌月から、債務者の方は、再生計画に基づく弁済を開始する必要があります。
再生後の注意点とは
再生計画に基づく弁済は、基本的には3年間(特別な事情があるときは5年間に延長されることもあります。)にわたる長期の弁済となります。
再生計画の認可がおりたあと、債務者の方は再生計画に従って着実に弁済を続けて債務を完済する必要があります。
弁済状況については、個人再生委員や裁判所は関与しないので、債務者自らが管理をしていく必要があります。
注意をしておく必要があることは、弁済を怠り債権者から裁判所に申し立てがなされた場合、せっかく許可にしてもらった再生計画が取り消されてしまう可能性があることです。
取り消されてしまうと、個人再生によって得られた債務の減額や分割払いといったメリットが失われ、元の返済条件に戻ってしまいます。
また、裁判所は職権により、自己破産手続開始をすることも可能であるため、マイホームなどの財産も望まないで手放さざるを得なくなる可能性もあります。
債務者の方は、弁済を計画的に行い、万一何らかの事情で予定通りの弁済が難しくなった場合は、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
まとめ
個人再生手続きは、裁判所に個人再生申立書と再生計画を提出し、その内容や債権者の意見、債務者の財産状況などを勘案して裁判所がそれを許可または不許可の決定をする流れとなります。
再生後の注意点としては、再生許可が取り消されないように、再生計画にしたがった弁済を着実にしていくべきという点です。