債権差押通知書の効力とその対処法

代表弁護士 伊藤 一星 (いとう いっせい)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号49525)
保有資格 / 弁護士

借金の返済に困り、滞納が長引いている場合に、債権者から「債権差押通知書」や「差押通知書」等のタイトルの書類が送られてくることがあります。

この書類にはどのような法的効果があるのでしょうか?また、この書類を受け取った場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

債権差押通知書の内容と性質

債権者から債務者に直接送られてくる債権差押通知書の内容は、一般的には、指定された期限までに支払いがない場合差し押さえをする旨の予告が記載されています。

つまり、この書面により債権者は債務者が任意に支払ってくれないのであれば、裁判所に対して債権差押命令を求めますということを予告しているのです。

裁判所から債権差押命令が出された場合、債権者はその命令に基づいて、債務者がその債務者(給料支払元である勤務先などをいい、第三債務者といいます。)に対して持つ債権から、強制的に取り立てをすることができます。

債権差押通知書は多くの場合予告ですので、債務者が任意に早く返済することを促す目的で送られています。債務者が裁判所に対して差押の申し立てをすることを通知するものですので、通知自体には差押の法的効果はありません。

一方、似て非なる書面として「債権差押命令通知書」という書類もあります。これは債権者ではなく裁判所から直接債務者送付される書面で、既に上記の債権差押命令が裁判所から出されており、今後実際に差押がされることを通知する書面となります。

債権差押命令通知書は、債務者に加えて第三債務者にも送付され、これによって第三債務者は債務者に対して支払をすることができなくなります。

債権差押通知書の効力

債権差押通知書は上記のように差押の予告ですが、督促を無視し続けた場合に送られることが多いため、今後債権差押命令が出されて差押が実行される可能性は高いです。

必ず差押がされるわけではありませんが、債権者としては債権差押通知書に反応がなければ、裁判所が介入する手続きに移行して差押を進めようとすることが一般的でしょう。差押の法的効力として、債務者はその後債権を取り立てることができません。

また、債権を他人に譲渡することが禁止されます。あわせて、第三債務者から債務者への弁済も禁止されるので、例えば会社からの給与の支払いが一部禁止される、銀行口座からの引き出しができなくなるなどの効果が発生します。

なお、債権差押命令が出された場合の差押の対象には、 以下のような財産があります。

  • 給料債権
  • 預貯金
  • 不動産や宝石、自動車、絵画などの動産類
  • 株式等の有価証券

なお、給料収入については、原則として毎月の手取金額の4分の1について、債務の完済まで差押えられることとなります。

不動産や動産類については差押えられた場合は、競売にかけられ金銭に換金されたうえで、債務の返済に充当されることとなります。

債権差押通知書を受け取った場合の対処法

上述したように債権差押通知書が送られた場合、その後、差押が実行されてしまう可能性が高いです。

そのため、債権差押通知書は放置せず、なるべく差押が実行されないよう早期に対応を検討する必要があります。

差押がされると、以下のようなデメリットがあるためです。

  • 給与の受け取りが一部制限されたり、銀行からお金を引き出すことができなくなったりする等の状況が発生し、生活が立ちいかなくなるリスクがある。
  • 第三者債務者である会社や銀行にも債権差押命令通知書が送付されるので、差押がされてしまった事実を知られてしまうので、社会的信用が傷ついてしまうリスクがある(銀行の場合には与信にも影響がある)。
  • 不動産や動産が差し押さえられ強制競売された場合、市場価格よりも安い売却となったうえで債務の返済に充当されてしまう。

ただし、存在しない借金についてさもあるかのように債権通知書を送るといった架空請求を行う詐欺手法もあるので、念のため、身に覚えがない借金でないかどうか確認しましょう。

また、古い借金についての通知である場合は、消滅時効が完成していないのか(原則最後の返済から5年間が経過していないのか)も確認しましょう。架空請求ではなく消滅時効も完成していない場合について、以下、具体的な対応方法についてご説明します。

債権者と交渉する

返済が可能そうであれば、まずは債権者に連絡をして、差押手続きを待ってもらうように交渉しましょう。一括返済が難しい場合は、分割支払いや返済期限の延長等で返済できないか検討し、債権者と交渉しましょう。

なお、税金の滞納の場合で、税務署から通知が来ている場合は、市役所等にいき、分割払いのほか、生活困窮の場合の減免措置などがないか相談してみるという方法があります。

住宅ローンの滞納の場合は自宅の任意売却を検討する

住宅ローンの月々の返済が滞っており、金融機関から債権差押通知書が来ている場合は、自宅の任意売却を検討するという選択肢もあります。

差押が実行された場合は、自宅は競売にかけられ、通常は市場価格より安い価格で売却されることとなります。その場合、債権者にとっても回収額が減るというデメリットがあるため、その間に市場価格で任意売却をして、残債を返済するという方法もあるため、提案してみましょう。

弁護士に相談して債務整理をする

返済のめどがたたなかったり、債権者が交渉に応じてくれなさそうだったりする場合は、債務問題に詳しい弁護士に相談し、債務整理等の方法を検討しましょう。

債務整理には、任意整理、自己破産、個人再生の3種類がありますが、債務整理に詳しい弁護士であれば、状況に応じて最も適した債務整理の方法等をアドバイスしてくれます。

弁護士のサポートを得て債務整理をすることにより、差押を回避できる可能性が高まりますし、もし差押がなされてしまった場合でも、自己破産や個人再生の場合は、差押を中止させたりすることもできます。

最後に

いかがでしたでしょうか。

債権差押通知書の効果と、債権差押通知書が債務者から送られてきた場合の対処法についてご説明しました。ご参考になれば幸いです。

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