自己破産の2種類の手続き|管財事件と同時廃止事件について解説

代表弁護士 伊藤 一星 (いとう いっせい)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号49525)
保有資格 / 弁護士

自己破産は借金が返済できなくなってしまった債務者の債務整理をして借金を免除する手続きです。

ところで、自己破産には、管財事件と同時廃止事件の2種類があり、それぞれ制度概要やかかる費用・期間が異なるため、ご自身が申し立てた破産手続きがどちらの手続きとして処理されるかは、破産者にとっても重要な問題です。

この記事では、管財事件と同時廃止事件それぞれの手続きとその違いについてご説明します。

自己破産の2つの種類

冒頭に記載したように自己破産手続には、大きく分けて2つの種類があります。

1つ目は管財事件といい、破産手続きを管轄する裁判所が破産管財人を選任したうえで、破産管財人が破産者の財産を調査し、管理してお金に換えたうえで、破産者にお金を貸している債権者に対して弁済・配当する手続きをいいます。

2つ目は、同時廃止事件といい、管財事件のように破産管財人は選任されません。同時廃止事件では、破産手続の開始と同時に、廃止によって終了するという簡略化された手続きとなります。

そのため、管財手続きと違い、手続きは短期間で終了し、費用も管財人事件と比較すると廉価となります。

なお、債務者が自己破産手続の開始を申し立てると、申立を受けた裁判所は、申立内容や債務者の状況に応じて管財事件か同時廃止事件かに振り分けをして手続きを開始します。

管財事件となる場合

それでは、まず、管財事件とされる場合はどのような場合でしょうか。

破産を申し立てた人が、換金可能な財産を一定額(裁判所によって多少基準は異なりますが、例えば東京地方裁判所では20万円とされています。)以上もっている場合には、原則として管財事件となります。

自己破産者の所有財産は競売などでお金に換えて、債権者に分配する必要があるので、破産管財人が付いてそれらの手続きを実行できるように管財事件とされるのです。法人の破産の場合は、常に管財事件となります。経営者が個人としても自己破産を合わせて申し立てる場合、法人の破産手続きと同期して進行するために、個人の自己破産についても管財事件に回されます。

また、破産者が対象額以上の財産を持っていない場合でも、破産者に免責不許可事由があるような場合は、管財事件とされる可能性があります。

免責不許可事由とは、破産が認められない理由で、例えば借金の原因がギャンブルや浪費によるものであったり、一部の債務者のみに不公平な弁済をしていたり、財産隠しが疑われるような場合があります。

また、過去自己破産をしたことがあり、7年以内に免責許可を受けていた場合も免責不許可事由となります。

同時廃止事件となる場合

一方、同時廃止事件となる場合は、債務者に分配すべき財産がない場合となります。破産法216条1項は「裁判所は,破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは,破産手続開始の決定と同時に,破産手続廃止の決定をしなければならない。」と定めています。

破産開始時点ですでに、破産債権者への配当や破産管財人に支払う費用を捻出できるような資力がないことが明らかである場合は、わざわざ破産管財人を選任して管財手続を進めることは手続の無駄となってしまうので、破産開始と同時に手続きを終了させるのです。

同時廃止事件となるメルクマールとなる資産の具体的な算出方法ですが、資産の項目別に判断をしていき、その中で1つでも基準値の20万円等を超える資産があれば管財事件となります。財産の項目ごとの判断として、例えば住宅については、不動産業者の査定の平均額などで価値が20万円を超えた場合は管財事件となります。

不動産について20万円の価値をしたまわることはあまりないですが、住宅ローンの残債が多くて価値を大きく上回る場合は同時廃止事件と判断されることもあります。自動車や宝石など動産についても、買取査定などによる評価でその価値が判断されます。

なお、現金については、破産者の最低限の生活を保障する目的で手元に残すことができる自由財産が認められているため、判断基準が少し異なります。同時廃止となるかどうか資産の状況がクリアではない場合は、資産調査が必要となるいう理由からやはり管財事件になります。

両手続についてかかる費用

管財事件と同時廃止事件では、破産を申し立てる人の費用負担に大きな差があります。

破産手続きに際しては裁判所に予納金という費用をあらかじめ納付しますが、管財事件の場合は通常約20~50万円程度の予納金の支払いが必要になります(法人破産の場合には負債の金額に応じ100万円単位で高額に必要になることがあります)破産管財人が破産手続きを進めていくにあたって報酬などが必要になるためです。

一方、同時廃止事件で必要となる予納金は、官報掲載のために必要となる約1万5000円程度であり、管財事件と比べるとかなり低額となっています。このように、費用面から考えた場合、破産を申し立てする人の立場からすると、できれば同時廃止事件として扱ってもらいたいところですが、その点は裁判所の判断となります。

最後に

いかがでしたでしょうか。

自己破産の2種類の手続きである同時廃止事件と管財事件についてご参考になれば幸いです。

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