自己破産が認められなくなる免責不許可事由とは

代表弁護士 伊藤 一星 (いとう いっせい)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号49525)
保有資格 / 弁護士

借金がかさんでしまい返済できなくなってしまった債務者の生活を再建する制度として、破産法に基づく自己破産制度があります。自己破産をする場合、裁判所に申し立てを行い、裁判所から免責許可という自己破産を認めてもらう許可を得る必要があります。

ところで、破産を申し立てても、必ずしも裁判所から免責許可がなされるわけではありません。一定の場合には、免責不許可事由があるとして、破産が認められないことがあります。

この記事では、自己破産の免責不許可事由についてご説明します。

免責不許可事由とは

自己破産が裁判所により認められると、免責許可といって、債務者の借金は免除になります。借金が免除されるということは、お金を貸していた側の債権者からみると、返済してもらえる予定のお金が戻ってこないという大きな不利益になります。

そのため、自己破産を申し立てた人の事情を裁判所が審査し、債権者の不利益を考えても自己破産を認めるにふさわしい状況がどうかを判定する必要があります。

そして、自己破産をさせるのにふさわしくないとされる所定の事由は破産法により定められており、これらを免責不許可事由といいます。

具体的な免責不許可事由

それでは、免責不許可事由にはどのようなものでしょうか。免責不許可事由は、破産法252条1項により定められています。

以下、それぞれの免責不許可事由についてご説明します。

債務者の財産を不当に減少させる行為

まず、債務者の財産を不当に減少させる行為については、以下のとおり、破産法252条1項1号により免責不許可事由とされています。

「破産法252条1項:債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。」

自己破産をする人の手元にある財産は自由財産を除き、破産財団として、裁判所が選任した破産管財人により管理され債権者に分配されます。

そのため、債務者は破産財団を勝手に処分することは禁止されます。これに反して、財産を債権者への返済に充てられることを避けるために、財産をあえて目減りさせたりするようなことをした場合、免責不許可事由となってしまいます。

例えば、愛車を売却されて売却代金を返済にまわされるのが嫌い、愛車を勝手に家族に贈与して換価処分を避けようとするような行為はこれにあたります。

不当な債務負担行為

次に、破産法252条1項2号では、免責不許可事由として、破産手続の開始を遅延させる目的での不当な債務負担行為を定めています。

例えば、債務超過となってしまい銀行などからお金を借りられなくなっている状態であるにもかかわらず、さらに違法な高金利の貸金業者で借金をするような場合です。このような行為は経済的再生を難しくするので、免責不許可事由とされています。

特定の債権者に利益があるように支払いをする行為

破産法252条1項3号では、いわゆる偏頗弁済、つまり特定の債権者にだけ返済をする行為を免責不許可事由としています。

複数の債権者が存在する場合、破産手続きにより、破産管財人が、破産財産を債権者間の公平をはかりながら配当して分配していきます。これを無視して、債務者の判断で勝手に、特定の債権者のみに返済すると、その分他の債権者は回収できる金額が少なくなり債権者間の公平を害してしまうので免責不許可事由となっています。

借金の原因が浪費やギャンブルである場合

破産法252条1項4号では、自己破産の原因となる債務超過が浪費やギャンブルなどによる場合であることも免責不許可事由としています。

自己破産による債務免除は、債権者の不利益の上に成り立っているので、借金の原因がある程度やむを得ないものだったといえることは必要という観点から定められています。

詐術による信用取引

破産法252条1項5号では、破産手続き開始の申し立て1年前から破産手続開始の決定があった日までの間に、そのような事実を隠して詐術を用いた信用取引により財産を取得した場合を免責不許可事由として定めています。

例えば、既に債務超過になっており借金を返すめどがないのに、借金の事実を隠したまま新たにクレジットカードを発行してショッピング利用を重ね、その数か月後に自己破産を申し立てたようなケースが該当します。

破産手続の妨害行為など

破産法252条1項では、その他スムーズな破産手続きの進行を妨げたり不正を働いたりするような行為を免責不許可事由としています。

帳簿の隠滅や偽造(同項6号)、虚偽の債権者名簿の提出(同項7号)、裁判所の調査に対して説明を拒む、又は虚偽の説明をすること(同項8号)、破産管財人等の業務を妨害行為(同項9号)その他破産法上の義務違反行為(同項11号)です。裁判所の破産手続きの進行に協力しない不誠実な債務者については免責許可をするに値しないと考えられるためです。

過去7年以内に免責許可を受けたことがある場合

破産法252条1項10号は、過去7年以内に自己破産をして免責許可を受けた人については、原則として2度目の免責を認めないよう免責不許可事由としています。

裁量免責とは

上に述べてきた免責不許可事由に該当している場合でも、必ず免責不許可になるというわけではありません。自己破産は債務者の生活再建のための救済制度ですので、破産法には、免責不許可事由に該当していても、個別のケース判断によって、裁判所の裁量により免責が許可される裁量免責という制度が設けられています(破産法252条2項)。

例えば、生活再建をするために家計の見直しなど積極的に努力をしていたり、破産手続きにも誠実に協力していたりする場合には、裁量免責が認められることがあります。具体的には、破産手続きの経験豊富な弁護士に相談してみましょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。

自己破産の免責不許可事由についてどのような事由があるか、」免責不許可事由があっても免責許可が受けられる裁量免責制度などについてご説明しました。ご参考になれば幸いです。

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