2度目の任意整理は認められる?

代表弁護士 伊藤 一星 (いとう いっせい)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号49525)
保有資格 / 弁護士

債務整理にはいくつかの種類があり、その中で、裁判所による手続きを経ずに、債務者と貸金事業者等の交渉と合意によって、債務の減額や分割払いなどを取り決めるものを任意整理とよびます。

それでは、かつて一度任意整理を行ったものの、また借金問題が解決できなくなり2度目の任意整理を行うことは許されるのでしょうか。

この記事では、2度目の任意整理についてご説明します。

法定の回数制限はない

裁判所の免責決定によって債務整理を行う自己破産の場合は、免責許可を受けた後7年間は、再度の自己破産の申し立てをしても、免責不許可事由となることが原則です。

これに対して、当事者間の合意を基礎とする手続きである任意整理の場合は、そのような法律上の回数制限はありません。

したがって、1回目の債務整理と同様、債権者側が了承してくれれば、2回目以降の任意整理をすることも可能ではあります。

しかし、債権者としても、2回目以降の債務整理となると、借金が回収できないリスクを警戒するので、1回目よりも交渉のハードルは上がることが多いでしょう。

2回目の任意整理となるパターン

2回目の任意整理となるパターンとしては、以下の二つがあります。

1回目とは別の債務者との任意整理

まず、1つ目のパターンとして、1回目の任意整理をした債権者に対しては借金を完済しているものの、再度別の債務者から借り入れをしてその返済が困難になり、2回目の任意整理をする場合です。

このパターンとしては、一度目の任意整理で合意した分割計画(3年~5年の分割計画での返済が多いです。)については返済が完了しています。

任意整理をすると、信用情報機関という個人の支払い能力や借り入れ状況を管理している機関に、その旨の事故情報が登録されます。いわゆるブラックリストに登録されたという状態です。

ブラックリストに掲載されている場合は、金融機関からの経済的な信用が失われているので、クレジットカードの作成やローンを組むことを含め新たな借り入れはできません。

しかし、任意整理の場合は、事故記録が削除されれば、その後はまた借金ができるようになります。

借金ができるようになったことに安心して、新たな借り入れをし、その返済が困難になった場合に、再度任意整理を検討することになります。

1回目の任意整理の和解内容を変更する場合

2つ目のパターンは、1回目の任意整理について債権者と合意に至ったものの、任意整理した返済計画に基づいての返済が途中で困難になり、和解内容の変更を債務者に依頼する場合です。

合意した支払い計画の内容が、債務者の現実の経済状況から考えると無理な内容となっているような場合に、こうした事態となってしまうことがあります。

多くの場合、債権者との契約上、任意整理をしたあとに、2回以上分割払いを滞納すると期限の利益を喪失して一括返済が求められ、遅延損害金も請求されます。

こうした場合、再度債権者と交渉をして、返済可能な内容に和解内容を変更してもらう必要があります。

2回目の任意整理を成功させるために

上述したように、2回目以降の任意整理をするための貸金業者等との交渉のハードルは1回目よりも高くなります。2回目の任意整理について貸金業者等から了承を得るためにはどのように対応すればよいでしょうか。

交渉を専門家に依頼する

債権者との交渉を、任意整理案件の経験が豊富な弁護士等に依頼することを検討しましょう。過去の任意整理の情報は、債権者間で共有されていることも多く、2回目の交渉は応じてもらうことが難しいです。そのため、過去複数回の任意整理の案件を取り扱ったことのある経験豊富でノウハウがある法律家に依頼することがおすすめです。

なお、弁護士等に相談する場合、2回目の任意整理を検討するに至った理由等を、隠さずに正直に話しておきましょう。

浪費等が原因の場合は率直に話すことがためらわれるかもしれませんが、弁護士には法律上依頼者の秘密を守る義務がありますので、安心して話しましょう。理由をごまかしたり嘘をついたりすると、債権者との交渉の途中にそれが発覚し、専門家が計画した交渉戦略が崩れてしまうことがあるためです。

2回目の債務整理の理由が浪費の場合と、リストラや病気などで働けなくなった場合とでは、債権者への交渉・説明アプローチも異なってきますので、弁護士にご自身の状況を話したうえでそれに応じた適切な対応をしてもらいましょう。

具体的な返済のための努力をし、債権者に示す

2回目の任意整理の場合、債権者からの信用が低い状態で交渉をスタートすることになります。そのため、必ず返済するという根拠を積極的に示していく必要があります。

例えば、家賃が安い住居に引っ越す、就労するなどの具体的な努力を行い、その証拠を積極的に債権者にアピールし、納得が得られるように努力しましょう。

2度目の任意整理ができない場合

2度目の任意整理をするための努力をしても、債権者の考え方や支払い能力・借金の状況によって、2回目の任意整理を断られてしまう場合もあります。任意整理ができない場合には、個人再生や自己破産などの債務整理手段を検討しましょう。

個人再生は、裁判所に個人再生計画を提出し、借金額をおよそ1/5から1/10に減額したうえで、3〜5年かけて分割払いで返済する手続きをいいます。自己破産とは、裁判所に免責許可をしてもらうことで、借金を全額免除してもらう手続きをいいます。

個人再生の場合、借金はゼロにはなりませんが、手持ちの財産を強制的に没収等はされないため、返済のめどがある人には適しています(所有権留保付きの車の引き上げを除く)。特に自宅を手放したくないという方には住宅ローン特別条項付きの個人再生申立てがお勧めです。

自己破産の場合、借金は全額免除されるものの、最低限の自由財産を除き、自宅や車などの財産を手放さなければなりません。

それぞれ、どちらの手続きがご自身にとってよいのか、専門家に相談しつつ検討してみましょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。

2回目以降の債務整理が認められるのかについてご説明しました。ご参考になれば幸いです。

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