過払金請求ができる条件は?グレーゾーン金利と時効について

代表弁護士 伊藤 一星 (いとう いっせい)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号49525)
保有資格 / 弁護士

消費者金融などの貸金業者から、利息制限法で定める利率を超えた高利率の借入れをしている場合、正しい利率で再計算した結果、過払金の返金を求めることができることがあります。

この記事では、過払金請求ができる条件、過払金の発生と密接に関連する「グレーゾーン金利」や過払金の請求権の時効について、それぞれ説明します。

過払い金が発生する理由は、グレーゾーン金利の存在にあった

グレーゾーン金利とは

貸金業者が貸付の際に付してもよい金利の上限は、利息制限法という法律に基づき、貸付金額に応じて上限が定められています。

具体的には、貸付金が10万円未満の場合は20%、10万円以上100万円未満の場合は18%、100万円以上の場合は15%が上限となっています。

ところが、出資法という別の法律では、かつて上限金利は年利29.2%と定められていました。

そのため、利息制限法の上限を超えても、出資法の上限金利までの金利であれば、事実上貸金業者が処罰されることはなかったのです。

このような理由から、多くの貸金業者が、利息制限法の上限金利以上出資法の上限金利以下の間の金利で貸し付けを行っていました。

この金利がいわゆる「グレーゾーン金利」です。

グレーゾーン金利の撤廃

しかし、2010年6月18日、債務者の金利負担を軽減するため、出資法が改正され上限金利が29.2%から20%に引き下げられました。

また、利息制限法の上限金利と出資法の上限金利の差分については、利息制限法の上限金利を超えた部分の金利は無効となり、貸金業者については行政処分の対象となります。

これによりいわゆる「グレーゾーン金利」は撤廃されたことになります。

その結果、法改正以降、貸金業者は、利息制限法の上限金利である15%~20%の利率で貸付けを行わなければならないことになりました。

利息制限法の上限金利を超えた部分の金利は、無効となったり、貸金業者に対する行政処分の対象となります。

さらに、改正された出資法の上限金利である20%を超える金利での貸付を行った貸金業者に対しては、刑事罰が課される可能性もあります。

過払金の発生

過払金を確認するためには引き直し計算が必要

グレーゾーンを撤廃した法改正以降の借入については、過払金は発生しないことになりますが、法改正前、つまりグレーゾーン金利での貸し付けが行われていた時代に貸金業者からの借入をした方については、過払金が発生している可能性があります。

具体的に過払金の発生の有無を確認するためには、グレーゾーン金利で借り入れていた部分について利息制限法の上限金利に引き直して再計算してみることが必要です。

引き直し計算の際には、利息制限法の上限金利以上に支払いすぎていた利息を、借金の元金に充当して計算します。

元金に充当することで借金がゼロになってからも返済を継続していた金額があれば、過払金が存在していたということになります。

みなし弁済の撤廃により、過払金返還請求が可能に

グレーゾーン金利を助長する制度として、旧貸金業規制法(現在の貸金業法)には「みなし弁済」というものがありました。

みなし弁済とは、貸金業者が利息制限法の上限利率以上の貸付をしたとしても、旧貸金業法43条所定の一定の要件(書面の交付や債務者による任意の支払いなど)を満たす場合には、無効とならないという制度でした。

みなし弁済が適用されてしまうと、利息制限法の上限を超えた利息の弁済も有効になってしまうので、過払金も発生しないということになってしまいます。

しかし、最高裁平成18年1月13日判決では、みなし弁済の効力を否定し、さらに貸金業法も法改正がなされたため、現在ではみなし弁済は撤廃されました。

過払金請求ができる条件は2つある

過払金請求ができる条件としては、グレーゾーン金利での借り入れを行っていて過払金が発生していること、過払金請求権が時効消滅していないことの2つがあります。

過払金請求については、最終取引日から10年間経過するともう請求することができないという消滅時効が定められています。

過払い金請求は、民法上の不当利得返還請求の一種に該当しますが、民法167条では不当利得返還請求権の消滅時効を10年と定めています。

仮にご自身の過払金請求権がもうすぐ時効消滅しそうという場合は、貸金業者に対して訴訟を提起する、貸金業者に督促状を内容証明で送り、さらにそこから6か月以内に訴訟を提起するなどの手段により時効の完成をとめることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

2010年6月の出資法の改正により利息制限法の上限以上出資法の上限以下の金利であるグレー金利が撤廃され、さらにみなし弁済制度がなくなったことにより、利息制限法の上限を超えて利息を支払いすぎた結果過払金が発生している場合は返還請求ができるようになりました。

過払金請求のためには、最終取引日から10年間を経過しておらず、過払金請求権が時効消滅にかかっていないことが必要です。

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