期限の利益喪失通知とは?対応策を解説
借金の返済に困り滞納を繰り返しているうちに、貸金業者から期限の利益喪失通知という書類が届くことがあります。
それでは、期限の利益喪失通知とはどういった内容の書類で、その通知を受けることによりどのような効果が発生するのでしょうか。
また、期限の利益喪失通知を受け取った場合に、どのような対応をすればよいのでしょうか。
期限の利益とは
期限の利益の考え方
期限の利益とは、一言でいうと、借りたお金の返済はあらかじめ合意している支払期日まで待ってもらえるという利益です。
期限の利益は、民法136条1項に根拠があります。民法136条1項は「期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。」と定めています。
例えば、債権者と債務者が、今年の3月末までに100万円を返すという約束をしている場合、債務者は今年の3月末までは返済する必要がなく、それまでに債権者から返済を求められたとしても断ることができます。
期限の利益と分割払い
期限の利益の概念は、分割払いでもよく利用されます。住宅ローンや大きい借入額などは、分割払いで借り入れされることも多いです。分割払いによる返済を合意することで、債務者にとっては一括で支払うことができない高額な商品やサービスであっても、将来の収入から計画的に分割して返済することによって、購入することができます。
また、債権者にとっても、分割払いを認めることによって、商品やサービスが販売しやすくなり、また分割払いの利息を得ることもできるようになります。
例えば、債権者と債務者が「2022年8月1日から120万円の返済が完了するまで毎月末までに10万円ずつ返済する」というような合意をした場合、債務者としては毎月10万円ずつ12か月かけて返済していくことができれば契約内容を遵守しているということになります。
期限の利益の定め方
期限の利益である分割条件や支払期日は、通常は貸金契約の契約書や約款上で定められています。
どのような条件にするかは当事者間の自由ですが、大手の貸金業者等の場合は一律で約款で定められていることが多いでしょう。ご自身の借り入れの条件がどのようになっているか、今一度確認してみましょう。
期限の利益の喪失とその通知
期限の利益の喪失とは
期限の利益は一定の事由が発生すると、喪失されます。期限の利益が喪失された場合は、定められた返済期日まで支払いが待ってもらないこととなり、一括返済請求を受けることとなります。期限の利益が喪失される事由には、法律上定められた事由と契約上の事由があります。
この記事では、貸金業者から期限の利益喪失通知を受けた場合についての解説ですので、契約上の理由による期限の利益の喪失を以下解説します。
貸金契約では、債権者が確実に債権を回収できるように、通常「期限の利益喪失条項」を定めています。端的に言うと、債務者が今後長期的に分割払いにより返済していってくれるという経済的または社会的な信用が失われたときに、期限の利益を喪失させるような内容となっています。
期限の利益喪失条項で、喪失事由として規定されていることが多い事項には、以下のようなものがあります。中でも、もっとも社会生活の中で多く発生する事由としては、1番目の分割払の返済の遅延があげられるでしょう。
- 分割払の返済の遅延
- 債務者が倒産手続き(破産手続、民事再生手続、会社更生手続、特別清算手続)に入ったとき
- 債務者が不渡り手形を出したとき
- 債務者が差押えを受けたとき
- 債務者の住所が不明となったとき
期限の利益喪失通知とは
期限の利益喪失通知は、貸金業者から、債務者が期限の利益喪失条項に該当したため、契約上の期限の利益が喪失されることを債務者に告げるための通知となります。
多くの場合は、事前の警告通知が届くことが一般的です。例えば、「〇月〇日までに滞納分の返済をしてください、返済がなかった場合は、期限の利益を喪失します」という内容となります。
期限の利益喪失通知を受け取った時の対応方法
債務者から期限の利益喪失通知を受け取った場合、以下のような対応をしましょう。
期日までに支払い可能な場合は速やかに支払う
期限の利益を喪失する前に、通知に指定された支払い期日までに、速やかに返済を行いましょう。通知が期限の利益の喪失を予告する通知であった場合、指定期日までに返済をすることにより、期限の利益を喪失せずにすみ、今後も毎月の分割支払いによって返済していくことが認められます。
債権者との交渉をする
指定期日までに滞納分の支払いは経済的に厳しいが、返済条件を見直すことで返済できる見込みがある場合は、債権者に連絡して、支払期限の猶予や分割計画の見直しなどをしてもらえないか交渉してみましょう。
債務整理を検討する
債権者が交渉に応じてくれない、または契約内容を変更してもらったとしても資力がなくて返済自体が難しいという場合は、自己破産や個人再生といった債務整理を検討しましょう。
自己破産の場合、すべての債務が免除されるメリットがあるかわりに最低限の財産を残して財産を手鼻避ければならないというデメリットがあります。個人再生の場合は財産を手放す必要はないけれど、返済自体は減額されて継続するという特徴があります。
どの手段をとるべきかは、債務者の状況や借金額にもよりますので、債務整理に詳しい弁護士に相談してみましょう。
通知を無視することは避けよう
なお、返済が難しいからといって、受け取った通知を無視することは避けたほうがよいでしょう。期限の利益喪失を警告しているということは、期日までに返済や連絡がなかった場合は、債権者が法的手段に訴える可能性が高いからです。
債権者が法的手段をとり、債務名義を得た場合は、裁判所から債務者の財産への強制執行が行われ、預金の凍結や不動産の競売等が行われてしまうこととなります。
最後に
いかがでしたでしょうか。
期限の利益の喪失通知と、通知を受け取った時に取るべき対応策についてご説明しました。ご参考になれば幸いです。