任意整理のメリット・デメリットとは?
任意整理とは、債務整理手続きのひとつで、借金がかさんで返済できる見込みがなくなったときに、貸金業者と和解交渉をすることにより、借金を無理なく返せるように調整するための手続きです。
任意整理は、他の債務整理の手段である自己破産手続きや個人再生手続きと違って、裁判所を通さない手続きである点に特色があります。
この記事では、任意整理のメリットとデメリットについてご説明します。
任意整理とは、貸金業者との交渉により借金の軽減を図る手続き
任意整理は、現在お金を借りている貸金業者と交渉、和解契約を締結することにより、借金の利息や月々の返済額を減らしてもらうことによって、無理のない返済をはかる手続きです。
他の債務整理である任意整理や自己破産では裁判所に申し立てを行いますが、任意整理では当事者同士の交渉を行うので裁判所はとおしません。
もっとも、任意整理手続きは交渉力や利息計算の複雑さなどを鑑みて、弁護士等の専門家に委託することが一般的です。
任意整理のメリットは5つある
任意整理には、大きく分けて以下の5つのメリットがあるといえます。
貸金業者からの直接取り立てがとまる
他の債権整理の手続きにも共通のメリットですが、任意整理を弁護士に依頼すると、弁護士の受任通知が貸金業者に届いてあとは、貸金業法の定めにより貸金業者は債務者に直接取り立てができなくなります。
煩わしい貸金業者からの督促がなくなり平穏な生活を取り戻せるという点は債務者にとって大きなメリットといえます。
借金の負担が減る
貸金業者との交渉によっては、利息をカットしたうえで長期分割払いにしてもらったり、一括返済をする代わりに借金を減額してもらえたりと、将来の借金負担が軽減される可能性があります。
また、これまでの貸金契約が、仮に利息制限法の上限利率を超えた利息だった場合は、過払い利息を取り戻すことができる可能性もあります。
職業制限がない、官報に掲載されない
上述した自己破産手続きをとりますと、一定期間、弁護士、司法書士、税理士などの士業や警備員、保険外交員などの職種に就業できなくなります。
債務者の方が、自己破産による職業制限に該当する職種の場合は、職業制限がない任意整理のほうが、メリットがあるといえます。
また、自己破産や個人再生の場合、金融事故として官報に掲載がされていまいますが、任意整理ではこのようなことはありません。
官報は一般人も閲覧ができてしまうので、掲載を避けたいという方は任意整理が向いている可能性があります。
財産を手元に残しておくことができる
自己破産の場合は債務がすべて免除される代わりに、最低限の自由財産を除き、債権者に分配するために高価な財産はすべて手放さなければいけません。
任意整理ではこのような制度はありませんので、たとえば持ち家、車、思い入れのある貴金属がある方でどうしても手放したくないという方には、メリットがあります。
裁判手続きが不要
任意整理は、裁判所が介入しない手続きであるため、場合によっては本人が裁判所に出頭する必要がある自己破産や個人再生よりは簡便な手続きであるといえます。
貸金業者との交渉や和解契約の締結は弁護士等に一任できるので、債務者の時間や手間負担が軽くてすみます。
任意整理のデメリットは2つある
上述のように様々なメリットがある任意整理手続きですが、以下の2つについてはデメリットだといえるでしょう。
借金の負担軽減度合いは他の債務整理よりも少ない
任意整理は、貸金業者との交渉により利息部分をカットしたり、分割回数を多くしたりすることで借金を返済しやすく調整するための手続きです。
弁護士と貸金業者との交渉次第でありますが、元金の大幅な減額までの合意してもらえるケースはそう多くなく、債務の全部や大部分が免除される自己破産や個人再生のような大きな効果は望めません。
したがって、定期的な収入があるなど今後返済していくめどがある人しか取れない手段であるともいえます。
任意整理後一定期間はローンが組めない
他の債務整理と同様のデメリットですが、任意整理をした事実は、信用情報機関に金融事故情報として、だいたい5~10年間は掲載されます。
掲載期間中は、住宅ローンや車のローンなど新しくローンを組んだり、クレジットカードを作成したりすることができなくなります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
任意整理をすると、①受任通知受領後は、貸金業者からの督促がとまる、②借金の負担が軽減される、③他の債務整理の方法と違い、職業制限や官報への掲載対象とならない、④他の債務整理の方法と違い、財産を手元に残しておける、⑤他の債務整理の方法と違い、裁判手続きが不要というメリットがあります。
一方、①借金の負担軽減度合いは他の債務整理よりも少ない、②任意整理後一定期間はローンが組めないというデメリットがあります。
ご自身の資力、借金の状態、返済のめどとあわせて、これらのメリット・デメリットを考慮して最適な債務整理の方法をご選択いただければ幸いです。